パープルチューリップ

​精神科入院経験から

患者らしい生き方より、自分らしい生き方を

精神科(閉鎖病棟)入院は私にとって大きな経験であり、

何が自身の証となり得るのかをとても考えさせられる機会となりました。 

 二週間の閉鎖病棟への入院。任意ということもあり、

それなりに物資の準備も心の準備もできたかと思っていましたが、

いざ入院してみると持ち込めたものは当初想定して用意したもののたった半分ほど。

 例えば、衣類などの保管に使用する簡単な袋は

手持ち紐も紙である紙袋でなくてはなりませんでした。

 液体洗剤を持ち込むことも難しく粉洗剤を探しに行きました。

細かな制限の一つ一つを挙げ出せばキリがありません。

些細なことでも積み重なれば気分はうつむき、心細さが襲います。

 そうしていざ入院しひとりぼっちになった時。私は、私自身を取り巻く社会において一体何者だったのだろう。何が私を『私』と決めていたのだろうかと、すっかり途方に暮れてしまいました。

 病棟の中で、私は『患者』でしかありません。

 知り合いの誰とも繋がりを自由に持てず、

親しみを込めて私の名を呼んでくれる友達もパートナーもいません。

 もしかしたら私は『患者』と呼ばれるただの記号で、

社会からはすでに切り離されてしまったのかもしれない。戻れないかもしれない。

戻れなくてもいいのかも。

考えるうち、自分はどんどんおぼろげになります。

 人恋しくて、寂しくなったのです。いつもの持ち物がないだけ。

それなのに私は、こんなに自分が誰なのか胸を張れなくなってしまうのだと・・・

 私達は普段、たくさんの他の方の助けを得て暮らしています。

 病院の中でももちろん看護師や医師の先生、同じ施設内で入院する患者さんという存在があり

まったくの真っ暗な孤独はありませんでした。

 ですが自分自身が頼りない時、人はどうしても戸惑いを覚えたり心細くなります。

そうして自分が自分であるという確かさに自信を保てなくなった時、

そっと足元を照らす蝋燭の灯のような、

あるいは手を伸ばした時に小指だけでも優しく握ってくれるような。

そんな淡く寄り添う存在が、限られた環境の中に少しでもあればと思いました。

 私にとってそれが今、自らの経験を生かせることとして始めた

無償での精神科入院物資支援という活動です。

同じようにそっと寄り添いたいと思っている方々から集まったモノを

キモチと一緒に届けていきたいです。

 ご本人の治療を邪魔することなく、病院側の負担を増やすことなくそっと、できる限り。

寂しさや不安に寄り添う一つのあり方として、

皆様に『ミーアの贈り物』を届けていくことができればと心から願っています。

​代表 菊池奈々子